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つぎへすすむ |
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「黒いキツネ」より |
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1 |
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ゆき子は、思わずソーニャの手をとると、門の太いコンクリートの柱のそばにうずくまりました。 「この地図の半分をはやくとってくるんだぞ。」 そういいながら院長はポケットからあの地図をとりだしたのです。 「へへへ……きょうじゅうに きっとソーニャをつかまえて……とりあげますよ。へへへ……」 ゆき子もソーニャも、ぎょっとして息をのみました。 ■台詞 ゆき子 「あっ!! いけない」 ソーニャ 「あの……院長もわるい人だなんて……」
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2 |
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そのとき、いきをきってとびだしてきた男が、院長と黒めがねの男によびかけたのです。 「屋上にいましたら、ソーニャらしい女の子と、バタヤのような子がふたり、たしかに病院へしのびこみました。」 「なに!」 ハジキの鉄とよばれた黒めがねの男と院長の目が、ぎくっとひかると、おそろしい顔であたりをさがしはじめたのです。 「あ……どうしよう。」 ゆき子とソーニャは、手と手をかたくにぎりあったまま、身うごきもせずにうずくまりました。 ■台詞 男 「た たいへんだ院長! ハジキの鉄あにい!」 院長 「なに どうしたんだ あわてて」
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3 |
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ソーニャは、いまにも泣きだしそうにからだをふるわせながら、おろおろしています。ゆき子とてこわさはおなじです。でも、おちついて、しずかに にげださないと、みつかれば、どんなめにあうかわからない…… そう思うと、ゆき子は男たちのようすをうかがいながら、そーっとうしろをふりむきました。くるときには気がつかなかったけど、よく手いれのできたうえ木が、門のところまでつづいているのです。 ■台詞 ソーニャ 「ゆき子さん こわい! みつかったら……」 ゆき子 「しっ しずかにして ソーニャさん」
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4 |
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ひとりづつなら木のかげにかくれてにげだせそうです。ゆき子は、そーっとソーニャをつっつくと、うしろをゆびさしました。 「ソーニャさん、はやく、ささきに にげて!」 そうささやいた時です。とつぜんゆき子たちの頭の上で、大きな声がひびきました。 ■台詞 ハジキの鉄 「どこかにかくれているにちがいありませんぜ」 院長 「つかまえたらふたりともただじゃおかねえ」
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5 |
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院長とハジキの鉄が、すぐそばまできているのです。 あっ! ゆき子もソーニャも思わずだきあいました。どきどきするむねがものすごくたかなって、そのたびにゆき子のむねのすずが、ちりちりとかすかになるのです。 かたっとでも音をたてたら、もうおしまい……ゆき子は、すずをおさえて、じーっと目をとじました。 |
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