ビルの谷間に、毅然とした姿で残る「京の町家」。懐かしさで、喜々として、スケッチのペンを走らせているうちに、ふうーっと、幼かったころがよみがえってくる。
戦前のあのころは、家々の軒下も、道端も、子供たちの天下だった。思いつくままの遊びで日の暮れるまで、はしゃいでいた。
昭和ひとけた世代は、激動の中で育ったけれども、そこには、恵まれ過ぎた今の子供たちより、はるかに伸びやかで、心豊かな暮らしがあった、と思う。
町家を描く筆を、そのまま当時の子供たちの遊びや暮らしへ、描きかえたくなった。単なるノスタルジーではなく、何かを語り、伝えられればと願いながら…。
(絵と文:木村祥刀)
京都新聞 1994
年 10 月 4 日 掲載
|