昭和ひとけた京育ち No.4 「シャボン玉」
 
No.4 「シャボン玉」

シャボン玉

前へ 次へ

 

しゃぼん玉 とんだ
屋根まで とんだ
屋根まで とんで
こわれて 消えた

風 風 吹くな
しゃぼん玉 とばそ

(野口 雨情)

 自分でつくったせっけん水を、麦ワラのストローにつけて、「ぷー」と吹き出す虹の気泡。スモッグなぁんて、この世に存在しなかった。昭和ひとけたの空は、どこまでも、どこまでも高く、澄みきっていて、透き通るように青かった。その青の中に…。

 太陽の光に映えて、赤、青、紫と、色とりどりに輝いて、かなたへ吸いこまれてゆくように、消える真ん丸い玉。優雅でメルヘンがあって、いいんだなあ、これが。

 男の子の遊びは普通、活発、勇敢、時に残忍なものだが、絵の好きなこの少年(私)は、しばしばせっけん水でロマンの世界に遊んだ。でも、やはり軍国日本 の時代。流れてゆく虹の玉に、大空を飛ぶ「空の神兵」へと、夢はせる事もあった。


  (絵と文:木村祥刀)

京都新聞 1994年 10 月 12 日 掲載


     

Top page にもどる

目次1にもどる   - サムネイル付き

目次2へすすむ  - サムネイル付き

 
ロゴ
Copyright © Librairie Seizan
All Rights Reserved

 


Librairie Seizan of KYOTO  Established 1996


inserted by FC2 system