しゃぼん玉 とんだ
屋根まで とんだ
屋根まで とんで
こわれて 消えた
風 風 吹くな
しゃぼん玉 とばそ
(野口 雨情)
自分でつくったせっけん水を、麦ワラのストローにつけて、「ぷー」と吹き出す虹の気泡。スモッグなぁんて、この世に存在しなかった。昭和ひとけたの空は、どこまでも、どこまでも高く、澄みきっていて、透き通るように青かった。その青の中に…。
太陽の光に映えて、赤、青、紫と、色とりどりに輝いて、かなたへ吸いこまれてゆくように、消える真ん丸い玉。優雅でメルヘンがあって、いいんだなあ、これが。
男の子の遊びは普通、活発、勇敢、時に残忍なものだが、絵の好きなこの少年(私)は、しばしばせっけん水でロマンの世界に遊んだ。でも、やはり軍国日本
の時代。流れてゆく虹の玉に、大空を飛ぶ「空の神兵」へと、夢はせる事もあった。
(絵と文:木村祥刀)
京都新聞
1994年 10 月 12 日 掲載
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