大きな竹かごを棒で立てかけ、その下に米粒を少々。息を殺して待っていると、「チュン、チュン」。何の疑いもなくスズメが米粒へ。その瞬間!!さっとひもを引いて、すべて生け捕り。なーんてことは夢のまた夢。いつも素早く逃げられた。
昭和の初め、町なかにも木が繁り、緑がいっぱいだった。秋になると、ギンナンやシイの実、ムクの実…と自然のおやつが、子供たちにとっては楽しみでもあった。
小鳥たちも、そんなエサがあるから、次々とやってくる。それを、あきもせずに狙う子供たち。
かわいい姿で、米をついばむスズメも、農家には大敵。田の稲を荒らすので、かかしや鳴る子で追われる嫌われ者だ…が。
昭和9年。東北一帯の農村は、近年にない冷害に襲われて大凶作に。昭和2年からの凶作続きで、スズメによる被害どころか、きびしい飢えの冬を迎えようとしていた。
(絵と文:木村祥刀)
京都新聞
1994 年 10 月 13 日 掲載
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