1本のひもや糸だけで遊べることが、いくつもあった。縄跳びに、ゴム跳び、電車ごっこ、などなど。中でも女の子の遊びに、知的で、造形のセンスのいる綾(あや)とりがあった。
輪にした糸を両手の親指と小指にかけ、中の3本の指を使って、かけたり、はずしたりしながら、物の形をつくる。はしご、富士山、舟…と、2人が交互に受けとりながら、アイデアをこらす。
「これ、三味線えー」。三味線転じて…「お琴やあ」。キャッ、キャッ、キャッと笑ったあとは、また考えこんで、ふうーと、ため息が入って…。知恵と想像力を駆使する。
物のない時代。男の子は竹トンボを作り、割りばしで輪ゴムの鉄砲をつくる。
当節の子供の、できあいのおもちゃよりも、工夫する楽しみのなんと心大きかったことか。
(絵と文:木村祥刀)
京都新聞
1994 年 10 月 20 日 掲載
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