昭和ひとけた京育ち No.22 「毛糸巻き」
 
No.22 「毛糸巻き」

毛糸巻き

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 戦前のお母さんたちは、朝早くから炊事にそうじ、洗濯、ひと息つく間もなく買い物、夜の食事とあと片付け、ふろをすませても夜なべで衣服や靴下のつぎあて…と一日中、力仕事と根仕事の連続だった。

 それだけに子供たちも、手伝いはよくやった。なかでも、われ先にとりあった手伝いの一つは、忙しい母を少しの間でも独占できる毛糸まき。

 汚れたセーターをほどき、束ねて洗濯をし、編み直す前にマリのように巻く。巻くために、束ねた毛糸を両手にかけているのが子供たちの手伝い。

 こんな時、母はきまって「千里の道も一歩から」「チリもつもれば山となる」なんてことわざを、解説つきで次々と話し出す。いつもながら一目散で逃げ出すところが、母を一人占めしたうれしさで、にっこり笑い素直なこと。

 「親の意見と“なすび”の花は 千に一つの無駄もない」そうだし。

  (絵と文:木村祥刀)

1994年11月29日 京都新聞 掲載


     

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