昭和ひとけた京育ち No.23 「輪回し」
 
No.23 「輪回し」

輪回し

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 戦前の町なかは車も少なく、子供たちには伸び伸び遊べる天国だった。そんな道路遊びの一つが輪回しだ。

 木桶(おけ)のまわりにはめる竹製のタガの輪を棒で押し、倒れないようにバランスをとりながら走り回る遊び。

 デラックス版は、壊れた自転車の車輪のリムを使うことだった。

 さびたリムをペーパーで磨いてピッカピカに。転がるリムは、太陽の光にまぶしく輝く。二つ、三つと並んだリムが、「チーン」と激しくぶつかりあってスリルは満点だ。

 素朴で単純な遊びでも、子供たちは、いつもかっこいい主役になりきる。

 昭和12年4月。日本機「神風号」が東京―ロンドン間を94時間で飛び、世界新記録を樹立。日本の航空機の優秀さを示す大ニュースに。輪回しの子供たちも、銀翼を輝かせて大空をゆく飛行士になりきり跳び回っていた。 

(絵と文:木村祥刀)

1994年11月30日 京都新聞 掲載


     

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