この秋、あるデパートの野菜売り場で、おしゃれな器に盛られた京野菜の数々を見ました。京の地名と品名が、それぞれ太字で誇らしく書かれていました。
堀川ごぼう、九条ねぎ、賀茂なす、壬生菜、鹿ケ谷かぼちゃ…。
泥や土はきれいに洗い落とされ、鮮やかな色つやで、見るからにおいしそう。
「へえー、懐かしい」と近寄り、表示の値段を見た途端、思わず後ずさり。戦前には、ごく当たり前に、身近にあったものが、今やなんと高級品に。貫禄十分の姿で、横たわっているのです。
「平安建都1200年記念」の赤い文字も、これら名産品にきらびやかな彩りを添えていました。
思えば子供のころ、牛車を引いて、町なかへ来られた近郊の農家の人たちは、くみ取りのお礼にと、気軽に特産の野菜を置いていってくれました。土がついていたり、形が不ぞろいでも、無農薬で本物の味を届けて頂いたことに、今さらながら感謝の気持がわいてきました。 (絵と文:木村祥刀)
1994年12月8京都新聞
掲載
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