昭和ひとけた京育ち No.30 「もちつき」
 
No.30 「もちつき」

もちつき

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 「29日のもちつきは、苦もちとゆうて縁起が悪い」

 戦前は今以上に日にこだわり、思わしくない日をさけて近所二、三軒が集まり、なごやかにもちつきをやった。

 早朝からおくどさん(かまど)の火を真っ赤に燃やし、冷えきった土間が温まったころ、三段重ねのせいろから勢いよく湯気が吹き出して、もち米特有のいいにおいが立ちこめる。

 「そろそろやな」とせいろのモチ米を石臼(うす)へ。軽い小づきがあって、つく人と臼取りの人の息の合ったかけ声で「イヨッ」「ホッ」「ドッコイショ」。合間にもちを取り上げ、空づきをさせて大笑い。

 子供たちはお鏡づくりの手伝いと、小もちの丸め役。顔まで真っ白い粉をつけて、失敗作は口の中に。

 あの、和気あいあいの杵(きね)の音も、今は昔―。

 (絵と文:木村祥刀)

1994年12月15日 京都新聞 掲載


     

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