昭和ひとけた京育ち No.31 「羽根つき」
 
No.31 「羽根つき」

羽根つき

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 子供たちが正月から、けんかをしたり、泣いたりわめいたりすると、

 「年の初めから、いがみおうてたら、1年中仲よお暮らせへんえ」

としかられて、ふだんのわんぱくはすべてご法度。

 女の子たちは晴れ着姿で口に紅をさすと、まるで人が変わったように、お上品な振る舞いでおすまし顔に。でも、三が日が過ぎてふだん着にかえると、いつものおてんば少女に逆もどり。

 押し絵の立派な羽子板から、板に絵を描いただけの実用品に持ちかえて、

 「ひとめ ふため みやこし よごめ〜」

と、歌いながら羽根を追う。

 羽根つきには1人での遊びと、2人で楽しむ追い羽根とがあって、羽根は丸いムクロジの種子(たね)に鳥の羽をつけ、2枚羽、3枚羽の2つがあった。

 寒い底冷えの京都の街なかに「カーン、カーン」と響く、すみきった羽根つきの音は、やはり平和な、正月ならではのものであった。

  (絵と文:木村祥刀)

1995年 1月10日 京都新聞 掲載


     

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