家族が集まる6畳ほどの部屋に、デーンと置かれた火鉢が1つ。これが昔の家では唯一の暖房だった。
小さな手あぶり火鉢や、長火鉢もあったけれど、なんといってもこの大きな火鉢の赤く燃えた煉炭(れんたん)の火は魅力だった。
燃料は炭、タドン、豆炭に煉炭があった。タドンは炭の粉にふのりをまぜ、ボール状にかためてあって、これはこたつ用。豆炭はゴルフ球ぐらいの小さいタイプ。
煉炭は炭とコークスの粉をかためた燃料だが、レンコンのように空気穴があいていて、これが大型の火鉢用だった。
どれも火のつき始めは、強烈な一酸化炭素が部屋に充満するけれども、昔の家はすき間風が入りこんで、通気性は十分。
暖かい火鉢の上に乗っかる行儀の悪い行為は、男の子ならだれもが覚えのある、ちょっぴり懐かしい姿に違いない。 (絵と文:木村祥刀)
1995年 1月26日
京都新聞 掲載
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