幼かったころをふり返ると、無性に懐かしくなるものに、駄菓子屋さんがある。
子供たちには、のどから手が出るほどほしくなるような、おもちゃや食べ物が、狭い土間や棚にいっぱい並んでいた。
昭和ひとけた世代が子供のころ、小遣いは日に1銭か2銭。紙芝居で1銭を使ってしまうと、駄菓子屋さんでは目移りがして迷うこと、迷うこと。
1銭を2倍、3倍にするには、あてもんや、と手をあわせ、祈ってくじの紙をつまみ上げ、指先でもんで、期待を込めてはがす時のあの忘れがたいトキメキ。
近ごろ、デパートで懐かしい駄菓子を売るコーナーを見かけるけれど、何か物足りないんだなぁ。
昔はどこの店も大抵おばあちゃんが店番。騒ぎながら品物選びをする子をにこやかに見つめていた、あんな温かさがほしいんだけど。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 1月31日
京都新聞 掲載
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