太鼓と鉦(かね)のにぎやかなリズムと、軽快なクラリネットのメロディーが聞こえてくると、それはちんどん屋さん。
まだ町なかが静かだった戦前、その音は遠くからでも、ひときわ大きく聞こえてきた。子供たちは猛ダッシュ。ちんどん屋さんの宣伝が、お菓子ならしめたもの。あめ玉やチューインガムなどを配ってくれて、
「どうや、おいしいやろ。お母ちゃんに言うといてや。言うてくれる子にはもう一つおまけや」
歓声をあげてむらがる子供たちの中でも、年長の子は「おいしい!日本一や」と、如才ないやりとりがあって、そこで独特の口調の口上(宣伝)が始まる。
「とざい、とーざい」 デン 「本日のにぎにぎしいお披露目は、ご存知お菓子の
○○
でござーい」 デン、デデン
後は子供たちのリクエスト曲を演奏しながら、右に左にと練り歩く。陽気で楽しい町の人気者だった。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 2月7日
京都新聞 掲載
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