昭和ひとけた京育ち No.41 「ちんどん屋さん」
 
No.41 「ちんどん屋さん」

ちんどん屋さん

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 太鼓と鉦(かね)のにぎやかなリズムと、軽快なクラリネットのメロディーが聞こえてくると、それはちんどん屋さん。

 まだ町なかが静かだった戦前、その音は遠くからでも、ひときわ大きく聞こえてきた。子供たちは猛ダッシュ。ちんどん屋さんの宣伝が、お菓子ならしめたもの。あめ玉やチューインガムなどを配ってくれて、

 「どうや、おいしいやろ。お母ちゃんに言うといてや。言うてくれる子にはもう一つおまけや」

 歓声をあげてむらがる子供たちの中でも、年長の子は「おいしい日本一や」と、如才ないやりとりがあって、そこで独特の口調の口上(宣伝)が始まる。

 「とざい、とーざい」 デン 「本日のにぎにぎしいお披露目は、ご存知お菓子の ○○ でござーい」 デン、デデン

 後は子供たちのリクエスト曲を演奏しながら、右に左にと練り歩く。陽気で楽しい町の人気者だった。

   (絵と文:木村祥刀)

1995年 2月7日 京都新聞 掲載


     

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