そろそろ冷え込みだすころになると、近所の駄菓子屋さんは、一銭洋食≠始める。
鉄板の上に小麦粉の水どきを「ジューン」と丸く伸ばし、ネギ、天カス、赤い干しエビ、青ノリや粉カツオをのせ、もう一度粉の水どきをかけて裏返すと出来上がり。
昨今のお好み焼きとは比べようもない質素なものだけど、昭和ひとけたが子供のころには、だれもが楽しんだおやつだった。
はけでたっぷりぬったソースが、鉄板の上に流れて「ジュー」と焼けるにおいが食欲をそそり、ここで切った熱々(あつあつ)を口に入れて、ワイワイ、ガヤガヤ。
この店のおばあちゃんの得意は、やかんに入れた粉の水どきで「のらくろ」などを描いて焼き、また粉の水どきを流して返すと、先に描いた絵がこげ茶色に焼けている楽しい絵焼き洋食≠セった。
暖かい鉄板を囲み、外が暗くなるのも気づかなかった、あの懐かしい思い出。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 2月16日
京都新聞 掲載
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