棒切れを1本持つと、子供たちのひとみは輝き、たちまちカッコいいヒーローになりきる。
ふろしきか手ぬぐいを顔に巻きつけると、正義の味方・鞍馬天狗になり、白馬ならぬほうきにまたがって現れるや、すらりと棒切れを、いや、名刀を抜きはなつ。相手は、割ばしの手裏剣を頭につけた、荒木又右衛門だ。
ちゃんちゃん ばらばら ちゃん ばらら
突然、宮本武蔵に変身して2刀流になったり、握りこぶしを重ねて指を立てて「どろん どろどろ」と忍術を使って猿飛佐助になったりと、子供たちのヒーローはごっちゃまぜ。
映画を見たことがない子供でも、紙芝居やめんこ、日光写真などで、ヒーローのカッコよさは知っていて、目を釣り上げて見えを切る。
昭和ひとけたの子供時代、あの無邪気だった顔も姿も、今は豊かさと引きかえに消え去って久しい。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 3月8日
京都新聞 掲載
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