「ボーン」と振り子の柱時計が不気味に響いて、なんと深夜の1時。おしっこに行きたくて、我慢に我慢をしていたけれど、もう限界だ。「エイッ、僕も男や」と跳び起きて、でもやっぱり怖くて、胸はドッキン、ドッキン。
昔の家の便所は、たいてい縁側の隅か外にあって、暖かくなると雨戸は開けっ放し。風で庭の植木の葉っぱが「サワサワ」と音をたてるだけで、ゾッとする。
息をつめ、横目で周りを確かめて、抜き足、差し足、忍び足。突然、「キキキッ」。開けた便所の戸がきしんで、「ギエーッ」と転がるように逆戻り。
でも、もう、もうあかん。ドスン、ドスンと縁先の板を踏みしめながら、「勝ってくるぞと、勇ましくー、誓って国を出たからにゃー」。
これでも戦前の子供たちは「男は強くたくましく」と言われ続けていたんだけれど。(絵と文:木村祥刀)
1995年 3月28日
京都新聞 掲載
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