戦前の小学校で、時々上演された影絵の芝居。
紙を切り抜いてつくった人物や動物たちが、大きなスクリーンいっぱい、シルエットで大活躍する桃太郎やカチカチ山の話は、小さい子にとっておなじみだっただけに、手に汗を握って楽しんだ。
その興奮を再現しようと、障子をスクリーンがわりに、両手を組み合わせて動物の型をつくり、電灯の光で影を映して、「さあて、始まり、始まり、ウサギと亀のお話でーす」 「なんやそれ、オオカミやんかぁ」。大笑いで遊んだ手影絵。
割りばしやおわんを持ち出し、どんぶらこっこと川を渡る一寸法師の姿など、手のこんだ型をつくったりもした。
あのころ、夏の夜店などで売っていた、ろうそくの炎で動物たちが回る走馬灯も、懐かしい幻想的な影絵の仕掛けだった。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 4月11日
京都新聞 掲載
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