昭和ひとけた京育ち No.67 「ちょうちん行列」
 
No.67 「ちょうちん行列」

ちょうちん行列

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  「紀元は二千六百年 ああ一億に 栄えあれ」。

 昭和15年11月10日。子供たちが真っ暗になった空に向かって、声高らかに歌いながら、ちょうちんや小旗を振って歩く。

 この日は学校でも盛大な式典があり、「日本書記」による第一代神武天皇の即位から2600年にあたると聞かされた。そして夜は奉祝のちょうちん行列だ。

 「歩調をとれっ」。上級生のひと声で、足並みそろえてザクッザクッ。神社の鳥居をくぐると「ぜんたーい、止まれっ」「きをつけい」「二礼、二拍手、一礼っ」。小さな手のかしわ手の音が暗やみの森にこだまする。

 「日本は神の国、どんな困難が襲ってきても、必ず勝利の神風が吹くっ」。上級生の熱弁にまじって、遠くで子供たちの歌声が「四百余州をこーぞる 十万余騎の敵 国難 ここに見る 弘安四年 夏のころ」

(絵と文:木村祥刀)

  1995年 4月13日 京都新聞 掲載


     

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