「しまったぁ」と思った時は、もう遅い。なんと背中までぐっしょりで、見事な世界地図を描いていた。
起きることも出来ない、あの情けなさ。じーっと、天井をにらんでいると、浮かんできた。あの勇ましい夢が。
日章旗をかかげ、日本刀を振りかざして、決死の敵前上陸一番のりだ。ほふく前進(腹ばいで進む)で鉄条網をくぐり抜けると、目の前は不気味なクリーク(小運河)だ。「えーい、日本男子だ」と、刀を口にくわえて、ザブーンと飛び込んだ。
あの時だ…急にもよおしてきて…。水の中だからと、つい気をゆるめてしまって…。
昭和16年ごろになると、戦局は激化の一途をたどり、子供たちにとっては不安と緊張の連続だったのだろう。朝、家々の物干し場に広げられたふとんが、それを物語っていた。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 4月18日
京都新聞 掲載
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