石ころまじりの土の道を、砂ぼこりを立てて、荷車を引く牛や馬。時折、女の子たちが悲鳴をあげるほど大きな糞(ふん)を、ドズン、ドズンと落としながら悠然とかっ歩する。
戦前、街中を走る乗り物は、電車道のチンチン電車とバスに、あとは自転車ぐらい。今では信じられないほど、のどかでのんびりとしていた。
学校帰りの子供たちが、荷馬車を見つけると、声をひそめて後を追っかけ、飛び乗ったり、ぶらさがったりのいたずらだ。
おじさんに見つからないように荷物の後ろで「らくちん、らくちん」。ところが、急に「はあーい、どうどう」。大きな声にびっくりして隠れたりして、帰り道が遠くなるのも忘れて遊び続けた、みちぐさ。
「道草」。久しく使わない言葉だけれども、なんとなくゆとりと豊かな響きがあって、少年時代に楽しんだ道草の思い出は尽きない。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 4月26日
京都新聞 掲載
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