戦時中の学校の校庭には、奉安殿という小さな社があった。その中には、天皇、皇后両陛下の御真影(お写真)が納められていた。
昭和16年4月。それまでの尋常小学校の名称が「国民学校」と改められ、子供たちは国を守る小国民として「強くたくましく」をスローガンに鍛えられた。
毎月1日、興亜奉公日には御真影が講堂に飾られ、校長先生が教育勅語を朗読された。「国に忠を、父母に孝を、兄弟(けいてい)に相和し」。小さな子供たちには、ちんぷんかんぷんだったけれども、式典の間は背筋を伸ばし、不動の姿勢で立ち続けていた。
登校、下校時には、奉安殿の前で衣服を正して最敬礼。きめられた通り、素直に守る毎日だった。でも、子供らしい無邪気さ、快活さは、失ってはいなかった。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 4月27日
京都新聞 掲載
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