昭和ひとけた京育ち No.73 「奉安殿」
 
No.73 「奉安殿」

奉安殿

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 戦時中の学校の校庭には、奉安殿という小さな社があった。その中には、天皇、皇后両陛下の御真影(お写真)が納められていた。

 昭和16年4月。それまでの尋常小学校の名称が「国民学校」と改められ、子供たちは国を守る小国民として「強くたくましく」をスローガンに鍛えられた。

 毎月1日、興亜奉公日には御真影が講堂に飾られ、校長先生が教育勅語を朗読された。「国に忠を、父母に孝を、兄弟(けいてい)に相和し」。小さな子供たちには、ちんぷんかんぷんだったけれども、式典の間は背筋を伸ばし、不動の姿勢で立ち続けていた。

 登校、下校時には、奉安殿の前で衣服を正して最敬礼。きめられた通り、素直に守る毎日だった。でも、子供らしい無邪気さ、快活さは、失ってはいなかった。

(絵と文:木村祥刀)

  1995年 4月27日 京都新聞 掲載


     

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