昭和ひとけた京育ち No.75 「らう屋さん」
 
No.75 「らう屋さん」

らう屋さん

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 「ピーー」。長く単調な音が聞こえると、それはらう屋さんだ。

 らう屋さんは、刻みたばこを吸うキセルの竹の管(羅宇)を掃除したり、取り換えたりするのが仕事だ。「ピーという音色は蒸気で鳴る笛で、屋台車に蒸気のタンクを積んで、ゴトゴトゴトとやって来る。

 子供たちがおじいちゃんから、預かったキセルを渡すと、おじさんは吸い口に蒸気を通す。しばらくすると、雁首(がんくび)から黒いヤニがドロリ。「出たあ」。ツーンと異臭が立ち込めて、どの子も顔しかめ、鼻をつまんで見つめている。

 子供たちはなんでも興味があって、疑問があって、

  「おじさん、たばこを吸う人って、そのドロッとしたもん体にも入ってるんやろ。体も掃除してあげたらええのに」。

 おじさんは頭をかいて、笑いながら帰ってゆく。「ピー」と笛を鳴らしながら。

(絵と文:木村祥刀)

  1995年 5月 3日 京都新聞 掲載


     

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