「ピーー」。長く単調な音が聞こえると、それはらう屋さんだ。
らう屋さんは、刻みたばこを吸うキセルの竹の管(羅宇)を掃除したり、取り換えたりするのが仕事だ。「ピーという音色は蒸気で鳴る笛で、屋台車に蒸気のタンクを積んで、ゴトゴトゴトとやって来る。
子供たちがおじいちゃんから、預かったキセルを渡すと、おじさんは吸い口に蒸気を通す。しばらくすると、雁首(がんくび)から黒いヤニがドロリ。「出たあ」。ツーンと異臭が立ち込めて、どの子も顔しかめ、鼻をつまんで見つめている。
子供たちはなんでも興味があって、疑問があって、
「おじさん、たばこを吸う人って、そのドロッとしたもん体にも入ってるんやろ。体も掃除してあげたらええのに」。
おじさんは頭をかいて、笑いながら帰ってゆく。「ピー」と笛を鳴らしながら。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 5月 3日
京都新聞 掲載
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