チチッ、チチッ、四十雀(しじゅうから)という小鳥だったろうか。小さなおやしろの前のかごの中で、飛びまわりながら、おさい銭を待っている。
取り囲んで見つめていた子供の1人が、やっと、おじさんに1銭を渡すと、チチッと、小鳥がうれしそうにくわえて、さい銭箱にチャリン。
口ばしで鈴を鳴らし扉を開けて中に飛び込むと、しばらくして、おみくじをくわえて出てきて、金色の帯封を切ると、エサをもらって、チチッ、チチチチッ。
大役を果たして誇らしげに飛びまわる。「すごい。かしこいなあ」。子供たちは感心して拍手かっさい。
戦前、縁日や夜店でよく見たかわいい小鳥の芸だ。おみくじを開いたおじさんが「大吉や、望みはかなうで、大将になれる絶対や」。チチッ、チチチッ。小鳥も太鼓判を押すようにさえずって、うれしがらせてくれた。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 5月10日
京都新聞 掲載
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