〽 柴刈り なわない わらじをつくり 親の手をすけ 弟を世話し 兄弟仲よく孝行つくす 手本は 二宮金次郎
これは尋常小学校唱歌で、戦前は学校の校庭に黒く光る銅製の二宮尊徳(金次郎)の銅像が立っていた。
尊徳は江戸末期の農政家で、幼いころ水害で一家が離散したのにもめげず、働きながら勉強を続けた偉人だった。
学校で教えられたころ、子供たちはこぞって本を読みながら歩き回った。
「ススメ ススメ ヘイタイ ススメ」。快活に金次郎になりきっていた。でも疑問は、あの人、何の本を読んでるんやろ、と、像によじ登ってのぞいてみたら、かっ色に光っているだけ。何も書いてなくて、ガックリ。
そんな銅像も、昭和18年3月、金属回収でお寺の鐘とともに供出されて、大砲や鉄砲に変わっていった。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 5月16日
京都新聞 掲載
|
|