「ガッシャン」と、おぜんがけとばされた。ごはんやおかずが部屋中に飛び散って、仁王さまのような形相でにらみつける、かみなり親父(おやじ)。
「お兄ちゃんが、お人形の手をちぎったぁ」 「ちがうっ!お前が無理にひっぱったからや」
みんなが上目づかいに見上げて、早泣きべそ顔。さっきまで四人が仲よく遊んでいたのに、ちょっとしたいさかいが派手になって、組んずほぐれつの大あばれ、運悪くそこへ、おとうちゃんが帰ってきて…。
昔は、地震、雷、火事、おやじ、といって怖いものの一つだった親父さん。
明治生まれの気骨と頑固さには、筋金が入っていた。超特大のかみなりが落ちたのは、弱い者いじめと、うそをついた時だった。
どこの親父さんも、怖くて威厳があったけれど、子供と遊ぶ時は、同じようにはしゃぐ楽しいかみなりでもあった。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 5月24日
京都新聞 掲載
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