「神さん、お願い聞いてぇ。ぼく、大きいなったら、陸軍大将になりたいねん」。 「ぼくは、海軍元帥や」。
子供たちが願いを込めて神社の神殿のまわりを走る。ひと回りするたびに手に持った「お千度札」を一つずつ、神殿におさめて鈴を鳴らしてお祈りをする。
お千度札には、竹の棒や木の札などがあって、年度がわりの4、5月ごろに神殿におさめるのは、町内の大人や子供が集まって安全と無病息災を願う大切な行事だった。
としの数だけお千度札をもって走る子供たちには、お参りのあとで、お供えのお菓子をもらうことが、楽しみだった。
「私は、兵隊さんが敵にやられたら、傷を治す看護婦さんになりたい」。 「私は女やけど、飛行機に乗って敵をやっつけたい」。
戦争という嵐の中で育った昭和ひとけた世代は、男の子も女の子も願いはみんな同じだった。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 5月30日
京都新聞 掲載
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