昭和ひとけた京育ち No.90 「代用食」
 
No.90 「代用食」

代用食

前へ 次へ

 

 

 大きくて、重い石のひき臼(うす)を、ゴリッ、ゴリッと、力いっぱい回すと、小麦ならうどん粉に、いった大豆ならきな粉、大麦やハダカ麦なら、ハッタイ粉ができる。

 ひき臼の石は、上下に分かれていて、上には材料を入れる穴があり、回すと材料がつぶれて粉になって出てくる仕組みだ。

 学校から帰ると、今夜は代用食のうどんと聞いて、早速、臼をひき始める。戦時中は、ご飯のかわりに、サツマ芋やジャガ芋が代用食で、うどんならもう最高。バン、バンザイのごちそう。

 あのころ、母は、そんな代用食すら何度も食べなかったのを知っている。「食べたんえ、先に味をみるのにいただいたの、気にせんとたくさんおあがり」。

 いつも笑顔で、育ち盛りの子供を気づかってくれた母。あの時代、どこのお母さんたちも同じだった。

(絵と文:木村祥刀)

  1995年 6月 8日 京都新聞 掲載


     

Top page にもどる

目次1にもどる   - サムネイル付き

目次2へすすむ  - サムネイル付き

 
ロゴ
Copyright © Librairie Seizan
All Rights Reserved

 


Librairie Seizan of KYOTO  Established 1996


inserted by FC2 system