大きくて、重い石のひき臼(うす)を、ゴリッ、ゴリッと、力いっぱい回すと、小麦ならうどん粉に、いった大豆ならきな粉、大麦やハダカ麦なら、ハッタイ粉ができる。
ひき臼の石は、上下に分かれていて、上には材料を入れる穴があり、回すと材料がつぶれて粉になって出てくる仕組みだ。
学校から帰ると、今夜は代用食のうどんと聞いて、早速、臼をひき始める。戦時中は、ご飯のかわりに、サツマ芋やジャガ芋が代用食で、うどんならもう最高。バン、バンザイのごちそう。
あのころ、母は、そんな代用食すら何度も食べなかったのを知っている。「食べたんえ、先に味をみるのにいただいたの、気にせんとたくさんおあがり」。
いつも笑顔で、育ち盛りの子供を気づかってくれた母。あの時代、どこのお母さんたちも同じだった。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 6月 8日
京都新聞 掲載
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