昭和ひとけた京育ち No.92 「ポン菓子」
 
No.92 「ポン菓子」

ポン菓子

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 「ボウーン」。

 耳をつんざくような音とともに、大きな金網のかごの中へお米がとび出して、ふかふかにふくらんだポン菓子が出来上がる。

 戦前、戦後と食べ物のないころ、ポン菓子は子供たちに大人気のおやつだった。

 リヤカーに釜(かま)や炭をおこすフイゴなどをつんで、「ポン菓子、つくろかぁ」と、おじさんが来ると、お母ちゃんに貴重なお米や麦をねだって、子供たちがとび出してくる。

 おじさんは五色豆作りの名人とかで、豆の話をするときは楽しそうだった。

 豆は日本人の命やでぇ。正月には「まめで暮らせるように」と黒豆を食べ、節分には豆をまく。豆腐も、味噌(みそ)も醤油(しょうゆ)も、豆からつくるん や。早よ戦争が終らんかいな。また、うまい五色豆をつくりたいなぁ。おじさんは炭火で熱した釜を回しながら、つぶやいていた。

(絵と文:木村祥刀)

  1995年 6月14日 京都新聞 掲載


     

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