「ボウーン」。
耳をつんざくような音とともに、大きな金網のかごの中へお米がとび出して、ふかふかにふくらんだポン菓子が出来上がる。
戦前、戦後と食べ物のないころ、ポン菓子は子供たちに大人気のおやつだった。
リヤカーに釜(かま)や炭をおこすフイゴなどをつんで、「ポン菓子、つくろかぁ」と、おじさんが来ると、お母ちゃんに貴重なお米や麦をねだって、子供たちがとび出してくる。
おじさんは五色豆作りの名人とかで、豆の話をするときは楽しそうだった。
豆は日本人の命やでぇ。正月には「まめで暮らせるように」と黒豆を食べ、節分には豆をまく。豆腐も、味噌(みそ)も醤油(しょうゆ)も、豆からつくるん
や。早よ戦争が終らんかいな。また、うまい五色豆をつくりたいなぁ。おじさんは炭火で熱した釜を回しながら、つぶやいていた。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 6月14日
京都新聞 掲載
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