澄みきった水が、ゆったりと流れる鴨川に、あでやかな模様の長い布が、錦鯉(にしきごい)が泳ぐようにゆらぐ。
初夏の太陽の光に、まばゆいくらいに映えて、三条や四条の橋の上から見ていると、まるで生きもののように見えた友禅流し。
友禅染の、のりを落としてさらすこの作業は、かつては桂川や堀川などでもよく見られた優雅で風情のある眺めだった。
ゴムの長靴をはいた職人さんが、鼻歌(うた)を歌いながら布を引き寄せては板の上でたたいて、また流しておくりかえすと、ますます色合いがさえて、あざやかなうつくしさだった。
「きれい、うち、あのお花の着物、きてみたいな」。
「うちは扇子の柄がええ」。
次々と流される布に、ため息をついて見つめる。
女の子ならだれもが、しとやかな着物姿にあこがれたころの、京都ならではの風物詩だった。(絵と文:木村祥刀)
1995年 6月20日
京都新聞 掲載
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