〽京の五条の橋の上 大のおとこの弁慶が 長いなぎなた振り上げて 牛若めがけて切りかかる
五条大橋のたもとから、鴨川の河原におりるとき、いつも口ずさんだ牛若丸の唄(うた)。
「わあー 今日はメダカがいっぱいいる」。
「牛若丸もメダカとりしたやろか」。
子供たちは手ぬぐいをひろげて、そーっとすくい上げると、とれる、とれる。小さな黒い体が、真っ白い手ぬぐいの中でびっくりしたように右往左往する。
「一回で百匹ぐらいとれたぁ、今日は千匹とるぞ。弁慶も刀を千本とったし」「違うわぁ 九百九十九本や、牛若丸は強うて、刀とられてへんもん」。
戦前、まだ自然がいっぱいだった鴨川。
水量もあり、悠然と流れていた古都の川も、今はすっかり姿をかえて、メダカもどこへいったやら。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 6月27日
京都新聞 掲載
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