昭和ひとけた京育ち No.102 「京の鬼門」
 
No.102 「京の鬼門」

京の鬼門

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 そこは家の鬼門(きもん)やし、きたない物を置いたらあかん、裏鬼門もきれいにしとかんと鬼がくるえ。 「鬼?! なんやそれは」。母に言われて、びっくり仰天した小学1年生の僕。

 ほーら、裏のお蔵の壁の東北の角(すみ)っこだけ、丸う削ってあるやろ。あれは かけこみ というて角をたてて、鬼を怒らしたら大変と丸うしてあるの。

 鬼と聞いてあわてる僕に、遠足で比叡山に行ったとき、延暦寺へお参りしたやろ、あのお寺は京の都をお守りするために建てられたんえ。御所の東北で鬼門の方向やしなあ。御所の塀も東北の角はへこましてあるわぁ。でも かけこみのない普通のお家は、清潔にしておくのが一番の鬼よけ。

 赤鬼、青鬼が恐ろしい形相で鉄の棒を振り回す姿を思い浮かべて、身ぶるいする僕に、母は「はい、お掃除、お掃除」と、ぞうきんを手渡して、せきたてた。

(絵と文:木村祥刀)

  1995年 7月 6日 京都新聞 掲載


     

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