昭和ひとけた京育ち No.104 「縁台将棋」
 
No.104 「縁台将棋」

縁台将棋

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 「ピチャン」と蚊をたたく。いらだって足や腕をかきむしりながら、ひたいの汗をぬぐう。

 「ぼん、あかん、また王手や、桂馬うっとかな負けやでえ」。岡目八目のおじさんたちの、うるさかった夏の夜の縁台将棋。

 クーラーどころか扇風機すら、あまりなかった戦前の夏。日暮れともなると、待ちかねて家の外に床几(しょうぎ)を持ち出して始まるのが将棋だった。

 本将棋あり、はさみ将棋や将棋倒し、つみ上げたコマをくずさないように一つづつ抜きとったりと、遊びはいろいろだったけれど、大人も子供も和気あいあいで、真夏の夜を楽しんだものだった。

 「わいは坂田三吉やあ、だれでもかかってこい」。ガキ大将はなぜか遊びは万能で、いつもコテンパン。今はガキ大将も、近所の人たちの親しげな姿もない。

(絵と文:木村祥刀)

1995年 7月12日 京都新聞 掲載


     

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