昭和ひとけた京育ち No.108 「送り火」
 
No.108 「送り火」

送り火

※本作品は、新聞連載終了後の1995年8月14日から20日までのあいだ、北区の「関西電力京都上営業所アミュージアム」で展示会を開催した際、抽選にて来観者の方に贈呈いたしました。

 画像は、ポストカードからスキャニングしたものです。ご了承ください。


 なお、木村祥刀の遺族からなる「木村祥刀顕彰会」では、今後の展示会や書籍の出版に備え、作品の所有者の方をさがしております。

 寄贈者の方で、このホームページをご覧になり、ご賛同いただける場合は、ぜひ書肆清山(おなじく遺族からなる私家出版社)までメールでご一報ください。

木村祥刀顕彰会 代表 木村元亮


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 毎年、8月16日の夜、如意ケ嶽の大の字が赤々と燃え上がると、北山の東から西へ、妙法、船形、左大文字、鳥居形が次々と五山に浮かんでくる。

 「おじいちゃーん、さいならぁ、また来年帰ってきてやぁー」。手を合わせるこの火は、お盆の13日にお迎えしたご先祖と、なごりを惜しんでお別れをする送り火だ。

 そんな伝統の聖火も戦争の激化で、昭和18年にはついに中止された。地元の人たちは早朝、真っ白いシャツを着て火床に並び、白い大文字をつくって、ご先祖とお別れし、翌19年には、近くの小学生たちが山に登って、この荘厳な行事を守ったと聞いた。

 昔の人たちは悪病よけに盃(さかずき)に水を入れ、燃えさかる大の字を写して飲んだり、野菜のなすびに穴をあけてのぞいたりと、五山の送り火は、ひたすら仏にすがる信仰の火であった。

(絵と文:木村祥刀)

1995年 8月 3日 京都新聞 掲載


     

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