昭和ひとけた京育ち No.25 「ヤジロベエ」
 
No.25 「ヤジロベエ」

ヤジロベエ

前へ 次へ

 

 学校の庭で拾い集めたドングリが、両手にいっぱい。クリの実を小さくしたような、丸くて愛らしい実。

 「食べたら、しゃべれなくなるえ」と、よく言われたドングリ。しかし、女の子はままごとのお菓子にしたり、穴をあけて糸を通し、ジュズつなぎにして首飾りに。男の子はパチンコで飛ばす小石のかわりや、ビー玉にも、と大活躍してくれて。

 さて、ポケットに残った10数個は、何にしよ…。夜の食事がすんで、寝るまでのひと時。テレビなんて娯楽のない時代の夜は長い。畳の上に転がしたドングリが、左右にコロコロと。「そや、ヤジロベエや」。

 くしの竹ひごを探してきて、ドングリに穴をあけて竹ぐしを刺す。Tの字形にして、指の上にのせれば、ユラーリ、ユラーリ。うまくバランスがとれたら、ヤジロベエの出来上がり。

 子供は遊びの天才。何にでも遊びを見つけて楽しんだ、過ぎし日々が懐かしい。

(絵と文:木村祥刀)

1994年12月6日 京都新聞 掲載


     

Top page にもどる

目次1にもどる   - サムネイル付き

目次2へすすむ  - サムネイル付き

 
ロゴ
Copyright © Librairie Seizan
All Rights Reserved

 


Librairie Seizan of KYOTO  Established 1996


inserted by FC2 system