「もったいない」─。そんな言葉が身にしみつき、だれもがつつましく暮らしていた戦前。
引き出しには、しわを伸ばした包装紙やひもが、整理してしまわれていた。
古新聞は習字の練習に、きれいな包装紙なら、着せかえ人形の着物や折り紙にして女の子が楽しみ、男の子はもっぱら紙鉄砲や紙飛行機をつくった。
ピカピカの金色の紙で折った飛行機は、翼を輝かせながら風に乗って舞い上がり、大空へのあこがれをかきたてる。
「本物みたい。乗ってみたいなぁ」
女の子たちと同じ思いで楽しむ愛機だが、「空中戦や」と、わんぱくたちの紙飛行機や、ぱちんこの石つぶてが飛び交うと、たちまち殺伐な戦争ごっこに。
思えば昭和ひとけた世代は、物心ついたころから、満州事変、支那事変(日中戦争)、そして大東亜戦争(太平洋戦争)と、なごやかな夢の持てない中で育つ巡り合わせにあった。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 2月23日
京都新聞 掲載
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