「好き、嫌い、好き…」
女の子たちが口々につぶやき、手にしたタンポポの花びらをちぎっては捨てる。
3月も下旬ともなると、原っぱのあちこちに、鮮やかな黄色のタンポポや紅紫のレンゲの花が咲き始め、子供たちが待ちこがれたように集まってくる。
「好き、嫌い、好き…」
花びらが風に舞って、のどかな花占いだ。残った茎は、先を少し裂いて口にふくむと、クルリと巻いてカンザシみたい。
レンゲの花は茎を編んで長くし、髪飾りや首飾りに。みずみずしい新芽をかきわけて、幸運の四つ葉のクローバーを探す子。つくしの小さい芽をみつけて歓声をあげる子。
なにげない空き地や原っぱにも楽しみがいっぱいあった戦前。
春来るごとによみがえる、あのころの底抜けに明るい笑顔と、秋の菊人形みたいに花いっぱいの少女たち。(絵と文:木村祥刀)
1995年 3月21日
京都新聞 掲載
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