昭和ひとけた京育ち No.59 「草摘み」
 
No.59 「草摘み」

草摘み

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 「好き、嫌い、好き…」

 女の子たちが口々につぶやき、手にしたタンポポの花びらをちぎっては捨てる。

 3月も下旬ともなると、原っぱのあちこちに、鮮やかな黄色のタンポポや紅紫のレンゲの花が咲き始め、子供たちが待ちこがれたように集まってくる。

 「好き、嫌い、好き…」

 花びらが風に舞って、のどかな花占いだ。残った茎は、先を少し裂いて口にふくむと、クルリと巻いてカンザシみたい。

 レンゲの花は茎を編んで長くし、髪飾りや首飾りに。みずみずしい新芽をかきわけて、幸運の四つ葉のクローバーを探す子。つくしの小さい芽をみつけて歓声をあげる子。

 なにげない空き地や原っぱにも楽しみがいっぱいあった戦前。

 春来るごとによみがえる、あのころの底抜けに明るい笑顔と、秋の菊人形みたいに花いっぱいの少女たち。

(絵と文:木村祥刀)

  1995年 3月21日 京都新聞 掲載


     

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