「チーン、チチーン」と、鉄製のべいごまが激しくぶつかりあって、相手のこまをはじきとばす。顔をしかめてくやしがる子、鼻高々で得意満面の子。
この遊びでは、なぜか大声を上げて騒がなかった。めんこと同じで、相手が大切にしているものを取り上げてしまうだけに、きっと思いやりの気持ちがあったからだろう。
おけか箱の上にござをかぶせ、真ん中をへこませた中で回るべいごま。金、銀、赤と色をつけて磨き上げた宝物だ。「取られてなるか」と、お互いに闘志を燃やし、真剣そのものの遊びだった。
めんこも同じで、ろうや油を塗って、少しでも風にあおられないようにと、工夫を凝らしたものだった。
でも、負けに負けて、くやしくって肩を落として帰るとき、そーっと無言で半分だけ返してくれた友達もいた。いいやつがいっぱいだった、あのころ。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 5月 9日
京都新聞 掲載
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