ルルルルル、ゴム動力のプロペラが回り、心地よい震動を手に残し、青空に舞い上がる模型飛行機。
急上昇から水平飛行。大きく旋回し、風にあおられて斜め飛行や宙返り。
折り紙の紙ヒコーキなんて、比べものにならないかっこよさだった。
やがてプロペラが止まり、滑走飛行を続けて草むらに2度、3度、バウンドして静かに着陸。
お隣の兄さんが、幾日もかかって作っているのを、庭つづきだったこともあって、毎日のぞいていただけに、喜びもひとしおだった。
飛行機大好き兄さんは、自分の部屋の天井いっぱいに、自作の愛機をつりさげて楽しんでいた。見上げる笑顔がさわやかだった。
そして昭和16年の春。兄さんは念願の航空学校に合格した。本物に乗って思う存分、大空を飛んでいるとの便りが1度あったきりで、帰らぬ人になってしまった。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 5月11日
京都新聞 掲載
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