戦前の男の子たちは、肥後守(ひごのかみ)というナイフを大切に持っていた。1年生から鉛筆をコツコツと削って使い方を覚えると、やがて木片や竹で、おもちゃ作りだ。
近所の兄貴分たちにおそわりながら、割りばしを束ねて輪ゴムを飛ばすゴム鉄砲を作ったり、竹とんぼを作ったり。
竹とんぼなどは、うまく飛ばないと何度もやり直しては悪戦苦闘。
それだけに軽やかに青空に舞い上がった時の喜びは、もう、天にも昇る心地。友だちを集めては鼻高々で、見せびらかせたものだった。
刃がこぼれると、と石でといで大切に使い続けたナイフ「肥後守」。
授業中にこっそりと、机の上に文字や絵を彫ったりの、いたずらもしたけれども、工夫を重ねながらの、おもちゃ作りのおかげで、どれだけ多くの事を学んだことか計り知れない。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 5月23日
京都新聞 掲載
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