戦前、車の騒音など無かった静かな街なかに、のどかに聞こえてきたのは、「さをやーさを竹けー」 「お花ーどうどすえー」などの売り声や、紙芝居の拍子木にチンドン屋さんのにぎやかな演奏など。
なかでも楽しかったのは、ハーモニカでなぜか「愛国行進曲」しか吹かない、しんこ細工屋さんが来たことだった。
「しんこ」とは白米を乾かして粉にし、水でこねて蒸したもので、おじさんは竹べらやハサミを使って、動物や小鳥など、何を注文しても、即座に作ってくれて、色とりどりのみつで着色して「ハイ出来上がり」。
いたずらっ子たちは、「ぼく、虫のハエ作って」 「ぼくは蚊や」。 女の子たちが気持ち悪がるのに、おじさんは笑いながら、見事に作り上げた。他にも丸めたあめをストローにつけて、ふくらませながら形をつくるあめ細工屋さんも懐かしい。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 5月25日
京都新聞 掲載
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