昭和ひとけた京育ち No.86 「鬼瓦と鍾馗さん
 
No.86 「鬼瓦と鍾馗さん」

鬼瓦と鍾馗さん

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 僕が竹馬で遠くまで行くのは、あの小屋根の上の鍾馗(しょうき)さんの研究に行くんや。 「へえー」 なんで鍾馗さんを置いてあるのか、教えてやろか。

 昔なあ、ある人が家を建てて屋根に恐ろしい顔の鬼瓦(がわら)をのせたんや。すると向かいの女の子が怖がって、とうとう病気になってしもうたんや。お医者さんが困って、鍾馗さんを置くと、あーら不思議、たちまち病気が治ったんや。

 「ふーん、なんでやろ」 それは昔、中国に楊貴妃(ようきひ)という人がいて、その人の宝物を鬼が盗みにきたのを、鍾馗さんが退治したんや。それからどこの家でも、魔よけに置くようになったんや。鬼退治やったら、桃太郎の人形でもええのやけど…。

 みんなが感心して聞いている横から妹が、

 「ずるい おじいちゃんに聞いたくせにっ」。 「しっ」。

(絵と文:木村祥刀)

  1995年 5月31日 京都新聞 掲載


     

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