ろじの入り口やら裏通りの板塀に、小さいけれどもあざやかな朱色の鳥居が取りつけてある。これは不浄よけ。おしっこおことわりの標識だ。
「ううっ、もれるうー。」 男の子が体をよじり泣きべそをかきながら、女の子にたしなめられて跳んだりはねたりして走り去る。
戦前、大きな塀には、めだつようにとお札や、しめなわが張ってある立派なものもあった。
夜、街のなかに明かりが少なかっただけに、不心得な人たちが多かったのだろう。ましてや子供たちは遊びに夢中でついその場で、なーんて事もしばしばだっただけに、この鳥居の効果は抜群で、悲鳴をあげて場所を探したものだった。
今は街も明るくなり、あまり見かけなくなった鳥居も、変化のない板塀に、ポツンとつけてある光景は、デザインとしても美しく何よりも威厳があった。
(絵と文:木村祥刀)
1995年 6月29日
京都新聞 掲載
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